「不動産で食べていく」がどんどん難しくなっている話
人口減少時代の不動産ビジネスをもう一回考え直す
知人と夜ごはんを食べながら、不動産のこれからについてじっくり話した内容をまとめます。
現場にいる人間としての正直な肌感も入っています。
1. まず大前提:「不動産=儲かる」はもう古い
「不動産業ってまだ儲かるの?」とよく聞かれます。
正直にいうと、昔みたいに不動産だけで安定して利益を上げるのは、どんどん厳しくなってきています。
理由はシンプルで、今の不動産って「ビジネスとして儲けるための商品」というより、「現金を不動産に変えることで税金を抑える装置」としての意味合いが大きいからです。
たとえば手元にたくさん現金を持っている人がそのまま相続すると、その現金は評価額ほぼそのままで課税対象になります。
でも、その現金の一部を不動産に変えておくと、不動産としての評価額は現金よりも圧縮されるので、相続税対策になる。
これは昔からある典型的なやり方です。
つまり、不動産の一番のメリットって「節税」なんです。
利益率の高い商品というより「現金を守るための箱」。
そしてこのメリットをちゃんと享受できるのは、元々まとまった現金・預貯金を持っている資産家層です。
ここでひとつ見えてくるのは、日本の税制は結果的に“資産を持っている人に優しい設計”になっていて、その枠組みのなかで不動産業界全体の売上や収益が膨らんできた、ということです。
だからこそ、「普通の人が不動産でがっつり儲ける」というモデルはそもそも前提が揺らいでいます。
2. 「買い叩いて高く売る」は正論。でもそれだけじゃ続かない
では、不動産業者が直接買い取ってリフォームして、あとで高く売る、いわゆる「買取再販」はどうか。
理屈としてはわかりやすいですよね。
安く仕入れて高く売る。差額が利益。
ただ、これって裏を返すと「安く売らされた側」と「高く買わされた側」という、2人分の“涙”の上に成り立つビジネスでもあるんです。
これを長期的・安定的に続けるのは、地域規模の商圏だとだんだん難しくなってきている。
倫理的な面だけじゃなく、単純に売る相手も買う相手も減ってるから。
さらに、不動産仲介って基本は手数料ビジネスです。
売買が決まってはじめて仲介手数料が入る。だから売買取引の総量が下がれば、そのまま生計に響く。
そしてその「総量」を押し下げているものが、いま一番大きな問題になっている“人口”です。
3. 一番のインパクトは「人が減ってる」という事実
不動産は最終的には人が住む(もしくは使う)から価値が出る、という大前提でまわっています。
逆に言えば「人がいない家」はどれだけ綺麗でも、どれだけ良い場所でも、収益を生まない。ただの箱になる。
そして現実として、日本人は確実に減っています。
若い世代は少なく、子どもも少なく、高齢者は多いけど年齢とともにいずれは亡くなる。
つまり、入居者としての「需要の母数」がじわじわ減っていく未来は、もう統計の話ではなく、目の前の商売の話になってきているわけです。
空室が埋まらない → 家賃収入が細る → 修繕コストを削る → さらに物件の魅力が落ちる → ますます決まらない
この負のループが各地で起きはじめていて、「賃貸として普通に回す」こと自体がむしろ難易度の高い技になってきました。
だから、昔みたいに「とりあえずアパート建てといたら家賃が年金代わり」という時代設計は、人口動態と合っていない。
これはオーナーにも業者にも重い現実です。
4. じゃあどうする?これからの不動産業は“組み直し”が必要
ここまでの話をまとめると、
節税需要は富裕層に偏っている
若い世代は少ない
空室は増える
高齢化は進む
従来型の「仕入れて売る」モデルは倫理的にも数量的にも細りつつある
つまり「これまでの勝ちパターンをそのまま続ける」のは限界に近い、ということです。
じゃあどこにヒントがあるのか。
ひとつは、“人が減る”ことを前提にした使い方の再設計です。
もう「住居として貸す」だけにこだわらない。
たとえば高齢者の小さなコミュニティスペース、ちょっとしたケア拠点、リハビリ・運動スペース、子どもの居場所づくり、軽作業ができるワークルームなど。
生活そのものを支える場に変えていく。
これって、空いている住宅や店舗をただ“貸す”んじゃなく、地域の課題とマッチングして“役割を与える”仕事なんですよね。
これはもはや「物件紹介業」ではなく「地域設計業」に近い。
5. 「元手はどこにあるのか?」という話
もうひとつ大事な視点は、商売の原則に立ち返ること。
昔から「儲けたい人から儲けるのが一番儲かる」という言い方があります。
たとえば不動産の世界だと、「不動産で稼ぎたい」と考える人に向けて、“稼げる物件”そのものを売るのではなく、“稼ぎ方”や“仕組み”を売る。
これもビジネスの形です。
買取再販のように誰かを安く買い叩くモデルではなく、むしろ「一緒にやりましょう」「こういう座組ならまだ価値が出ますよ」という提案型に寄っていく。
ここには可能性があります。
なぜなら、人口が減っているからこそ「やり方を変えないともう回らない」と気づいているオーナーはすでに増えているからです。
困っている人は確実にいる。
その困っている人に対して、現実的な出口を設計すること。それ自体が新しい商品になり得る。
6. まとめ:不動産は「箱を売る仕事」から「生き方を編集する仕事」へ
これからの不動産は、単純な「土地・建物の売り買い」や「アパート満室計画」だけでは続きません。
人口が減る、若い世帯が少ない、相続の形も変わる、空室は増える。
これはもう時代の流れです。
だからこそ、不動産業は「物件を動かす業」から「まち全体の役割を組み替える業」へと移行していく必要があると思っています。
空いている場所に、これから必要になる機能を入れる。
その機能で地域の不安を減らし、人の関係をつなぎ直す。
それによって、まだ価値が残っている不動産をもう一度生かす。
人口減少は“終わり”じゃなくて、“次の前提条件”です。
その前提の中でどういう場所をつくるか。
その勝負を、これから僕たちは本気でやっていかないといけない段階に入ったと感じています。



